湊かなえさんと言えば、えっ!?と驚くような展開が大得意のミステリー作家ですが、そんな湊さんが「震えた」という実在の事件がアメリカにあります。
それが「ディーディーブランチャード事件」。この出来事は、ディーディーとジプシー母娘のゆがんだ愛が作り出した悲劇です。
2人はどんな関係で何が起きたのか。
湊かなえさんが震えるほど「真実は小説より奇なり」なディーディーブランチャード事件について迫ってみます。
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ディーディーブランチャード事件とは
2015年、アメリカ・ミズーリ州の自宅でディーディーブランチャードの遺体が発見されました。
衝撃的だったのは、事件から数日経って逮捕された犯人が、ディーディーの娘・ジプシーとその彼氏・ゴドジョンだったということ。
子どもが親をあやめる事件は、残念ながらそんなに珍しくない世の中になってしまいましたが、この事件が全米の注目を浴びたのには別の理由がありました。
それは、ジプシーが難病をかかえる少女であり、母親のディーディーはそれを介護するシングルマザーとして、元々全米でも知られる存在であったからです。
しかし、事件が起きたことで、真実が明らかになることとなりました。
それは白血病や筋ジストロフィー、脳障害などいくつもの病を抱えていると言われていたジプシーが、実はそんな病にかかっているというのはすべて嘘であり、母のディーディーが、心理的に加え、実際に体にもいらぬ施術をしたり薬漬けにすることで、我が子を「難病患者」に仕立てあげていたのです。
常に一緒にいた母娘ですが、ジプシーが何が話そうものなら、いつでもつないでいたという手をぎゅっと握りしめ、何も言わせないようにしていたのだとか。
物心ついて、少しずつ母親がおかしいことに気付いたジプシーは、母親のパソコンを使って出会い系サイトを使うようになり、そこで知り合ったのが彼氏のゴドジョンだったのです。
母・ディーディーブランチャードの方が病気!?
難病を抱えた娘を支えるシングルマザーということで、多くの支援金や募金を自分のものとしていたという母・ディーディー。
我が子を難病患者に見せるため、必要もないような手術を受けさせたり、薬を投与したり、車いすでの生活を強いていたと言います。
食事も栄養チューブを通してやっていたり、見た目も考えてかジプシーは髪をそり上げられ、ここまでされると、いくら健康な女の子でも「自分は病気なんだ」と思い込んでしまいそうなレベルだったようです。
母親が亡くなったことで判明したこの事件ですが、母・ディーディーはその後「代理ミュンヒハウゼン症候群」と言う精神疾患だったと診断されています。
「ミュンヒハウゼン症候群」というのは、
周囲の関心をひくために病気を装うというもの。その昔「ほら吹き男爵」と言われたミュンヒハウゼン男爵からとられたネーミングだそうです。
そして「代理ミュンヒハウゼン症候群」とは、自分が病気を装うのではなくて、代理で誰かを病気に仕立て上げるというもの。
その被害者となるのは、多くは子どもや高齢者、障害者らしく、まさにジプシーも幼い頃から母親ディーディーの病気の犠牲者だったというわけです。
私も同じ母親として、そんなことが子供にできるのだろうかと不思議でなりませんが、虐待の一種でもあるらしく、アメリカでは他にも同様な事件があり、毒を飲ませられたり、要らぬ手術を繰り返し受けさせられたというかわいそうな少女たちが存在します。
そして、日本でも同じような事件は複数起きています。
驚きしかありません。
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ディーディーブランチャードはなぜこのようなことをしたのか
「代理ミュンヒハウゼン症候群」と言われた母・ディーディーはなぜこのようなことをジプシーにしてきたのでしょうか。
この病気になる人物は、元々ミュンヒハウゼン症候群だった人も多いそうです。そしてミュンヒハウゼン症候群になる原因というのが、自分が病気になったことで家族や周囲の人に優しくされるという経験があることが多いのだとか。
普段から恵まれた環境の中で生活すれば、病気になって周囲が優しくしてくれるのは当たり前なのかもしれませんが、そうでない場合、「また病気になれば、優しくしてもらえる」と考えてしまうのも当然でしょう。
そんなミュンヒハウゼン症候群の人が親になると、子どもをその犠牲者にする場合が多く、それが今回のジプシーです。
ディーディーの過去については知ることができませんが、離婚もしており、これまでに何かしらトラウマになるような経験もあったのかもしれません。
傍から見ると、何年も医者とかはその嘘に気付かないものだろうかと思ったりしますが、医師の目から見てもその判別は難しく、ばれそうになると転院したりするパターンも多く、なかなか真実を見抜くのは簡単なことではないと言います。
ジプシーは、結果的には刑務所に入ることとなってしまいましたが、それでも
「母と暮らしていた時よりも今の方が自由を感じる」
とインタビューで語っています。
幼い頃から、どんな苦しみを追ってきたのかと思うと本当につらい言葉ですね。
もう一つのつらいこと
ジプシーが幼い頃から、母・ディーディーに受けてきたある種の虐待は、本当につらいことだったと思います。
しかし、さらにつらいなと思うのは、ジプシーをこんな状況から救うためにゴドジョンが犯行に及んだわけではないということです。
というのも、ゴドジョンは自閉症とされており、ジプシー自身も幼い頃からひとりの人間と扱われることなく育ってきたことを考えると、二人は全く幼い発想のままでディーディーをあやめてしまったことになります。
幼い頃に無条件に受ける親の愛というのは、何物にも代えがたい子供への栄養だと思います。
しかし、ねじ曲がった母親の愛しか受けてこなかったジプシーが、これから先、どんなふうに生きていくのか、心配もしてしまいます。
加えて、母親と一緒に映った写真のすべてが満面の笑顔のジプシー。物心つくまでは、体はどれだけつらい目にあわされても、母親に全幅の信頼を置いてきたのでしょう。
これからの環境がジプシーを変えてくれることを祈るばかりです。
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